一人っ子は珍しい人間だったのである。そのためか、私が試練に打ち勝てずに挫折感をあじあうたびに、「あいつは一人っ子だから」とののしられていたのを思い出す。
当時の概念は(今でもそうかもしれないが)、一人っ子は甘やかされている上に、兄弟間での生存競争を体験していないために、心・技・体ともに劣っているという考え方が主流だった。それ故に、一人っ子であることにコンプレックスを感じたことが多かった。
息子は友達も一人っ子が多いせいか、そういうコンプレックスは感じていないようである。一人っ子でさびしい思いをしたことは多いが、家計にとっては一人っ子であることで、旅行に行きやすかったり、欲しいものを買ってもらえたりでメリットも多かった。
確かに兄弟の多い子はたくましかった。